TOP >Works


タイトル : 夢のはじまり
      (須山公美子2nd)
名義 : 須山公美子
出版社 : OPCO
出版コード :opco-0203
制作 : ZERO RECORDS 復刻版(デジタル・リマスタリング)

(注 このCDは以下の解説に述べられるとおり、宇都宮はささやかな関わりしか持ちませんが、教材として斡旋紹介します。)

このCDは’86年に発表された須山公美子のセカンド・アルバムの復刻版であるが、その復刻作業は須山氏に全面委託されたもので、そのプロセスは近年流行のデジタル・シミュレーションではなく、ハイエンド・アナログ・プロセス技術を駆使した職人芸的作業であったことから、教材としてここに掲載した。制作は当時のZERO RECORDS(現在のZERO COMMUNICATIONS, LTD)でインディペンデント・レーベルとしては破格の予算と人材を投入して完成された究極の1枚と言える。

参加メンバーは佐藤幸雄をはじめ、溝口肇、竹田賢一、故 篠田昌已、大熊亘、近藤達郎、
清水一登、れいち、など、当時のアナログ版マスタリングも下重修(JVC)、マスターテープのフォーマットも76cm/sec-1/4inch-CCIR-512nwb/mという強力なもので、録音自体も当時としては珍しくマルチ・レコーディングとペア・マイク・ステレオが混在した進歩的なものであった。しかし当時はメディアはアナログLPからCDに急速に転換しつつあった時代であり、配給やキャンペーンが円滑に行われなかった上、制作・発売元であったZERO CO, の経営上の問題などからCD化は見送られていたようである。

宇都宮は当時アフターディナーと少年ナイフ等を手掛けていたが、それらの制作物は手法的にはこのCDに見られるものと類似しているかのように考えられがちであるが、思想的には対極を為すものであり、比較評価の材料としておもしろい存在であると思われる。宇都宮側は技巧として現在も進歩を続けているが、このCDに見られる手法はほとんど鳴りを潜め、かろうじてラルス・ホルメルの新作「SOLA」(KRAX TUTI-0002 INFINITE RECORD)にうかがえるくらいである。

マスタリングに関する一般的問題はこの文中で論じるにはあまりに深刻で根深いのでこ
の場での言及は避けるが、このCDで宇都宮はマスタリングのみに専念し、表現主体とし
ては一切関わっていない。私の仕事としては極めて珍しいことであり、このカタログに記
載の宇都宮色の強い作品に胸焼けしているリスナーには最適な1枚かもしれない。

 2002年 宇都宮 泰